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「…大丈夫?」

「っ…」

 

ぱさぱさと乱れた金色の髪が左右に揺れる。

息をするのも辛そうなエドワードの頬に手を当ててからアルフォンスも辛そうな息を吐いた。

 

「ぃ…たいっ…」

「ん…ごめんね…」

一応アルフォンスのものは入ったものの、やはりまだ相当きついようだ。

喘ぐように訴える兄の額に口接けると、アルフォンスは兄に挿入したものを抜こうと身体を離した。

「や…っ」

途端に、エドワードがアルフォンスにしがみついてそれを拒む。

「でも兄さん、これじゃ辛いだろ?」

「ぃいっ…やだっ」

「どっちだよ…もう…」

とにかく放してもらえないので、アルフォンスは兄に体重をかけないようにベッドに肘をついて彼に身を寄せた。

「アル…アル、」

「はい?」

「だいじょうぶ、だ。動いて、いい」

短く息を継ぎながらエドワードはアルフォンスの耳元でそう告げる。

 

「何云ってるのさ…」

「だって…お前だって、つらい、のに…」

 

アルフォンスの背中にまわした腕に、力がこもる。

 

「俺だって…お前のこと気持ち良く、してやりたい。」

 

涙を零しながらそういわれたアルフォンスは必死で動き出しそうになるのを堪えながら、兄の眼尻に唇を寄せた。

今一番つらいのは自分のくせに。

なんだってそんなことばかり云うのだろう。

悔しさと、我慢しているせいでアルフォンスの声が不機嫌な色を含む。

 

「ばか兄…知らないからね…?」

 

 

 

 

 

 

 

「ぐぁ……なんだこれは…っ」

翌日。

 

昼近くになって眼を覚ましたエドワードはビリビリとした腰の痛みと、ガンガン頭を殴られるような頭痛に襲われた。

てっぺん近くまでのぼった陽の光が眼に厳しい。

自分が裸なのも、横に転がっているアルフォンスも裸なのにもリアクションをとる余裕がない。

 

「わぁ…凄い顔。二日酔い?」

 

初夜の甘さなど蹴散らすような兄の鬼のような顔にアルフォンスも苦笑してしまう。

 

「うるせ……うぁ…い゛だい゛…っ」

 

アルフォンスに背を向けようとしたエドワードだったがズキズキガンガンとくる痛みに失敗する。

あまりの痛さに吐くかもしれないと思っていると、頭をそっと撫でられる。

「ごめんね…?」

心から申し訳なさそうな声をきいて、ほんの少し胸が痛む。

「次はもっとうまくできるようにするからね。」

「って次があるんかいっ!…あいでででっ…!」

「あぁもう…じっとしてないとだめだよ。」

お前が変なことを云うからだ!と力一杯云いたいものの、今は痛みをやり過ごすので忙しい。

今は何も思い出したくないのに、じっと黙っているのをいいことに、アルフォンスは尚も甘ったるいことをいってくる。

「今日は一日寝てていいからね?僕が全部世話してあげるから。」

「なんだそれは…介護か。」

「嫌なら沢山して早く慣れようね。」

「……。」

もう喋るのも嫌だと毛布に埋もれていると、肩にそっと体重がかけられる。

 

「ありがとう、兄さん。僕とても幸せだよ。」

 

その声があまりにも、あまりにも幸せそうで。

あまりにも嬉しそうで。

エドワードは堅く結んだ唇が緩まないように努力しなければいけなかった。

 

 

 

 

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