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あの日。

俺たちは自分たちの家を焼いた。

跡形もなく、燃え尽きるように願って。

迷わずに、まっすぐに走ることを誓って。

必ず元の身体に戻れると信じて。


それでも、
アルの錬成方法のカギをしっかりと手に握り締めて、
どこで実行しようかと考えた時に、頭に浮かんだのは捨てた筈の故郷だった。

帰ってきて思い出すのはやっぱりあの夜のこと。
母さんに会いたい一心で錬成陣に手をついた瞬間。

犯した罪。

 

例えアルの身体を元に戻したとしても、その罪は償えない。
曲がってしまったものを、無理矢理あるべきカタチに戻しただけ。

アルを含めた、いろんな人、
母さんに、ウィンリィに、ばっちゃん。
一時期、自分たちしか信じることができなくて、ないがしろにしてしまった人たちを思う。
償いは、これからだ。
俺は今ようやくスタート地点に立っている。

 

もう一つ。
償いを果たせたとしても、罪は罪。
俺は俺の犯したものを決して忘れてはならない。

だから、俺は右腕と左脚は、このままにしておきたかった。


もちろんアルには大反対された。

 


…嘆くな。弟よ。

この手足は俺の大事な証なんだ。

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