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火は可燃物質と酸素の化合による、発熱と発光を伴う激しい物質の化学反応の際、発生するもの。

火があがった状態を“燃焼”と呼び、触ると“火傷”する。

水は酸素と水素の化合物。無色透明無味無臭で、触ると“濡れる”。どちらも不思議な物体。

だけど毎日毎日蛇口を捻るたび、火を起こす度にそれに驚いていては生活が出来ない。

蛇口にだってマッチにだって驚かなければならないだろう。

そんなことをしていてはお茶も飲めない。

だから、人間の脳には適応、というシステムがあらかじめ組み込まれている。

それが、“慣れる”ということ。

俗に言うマンネリ。

もう一つ。大事なことがある。

それは“忘れる”ということ。

この二つが手を組むと最強。

「だからな、」

 

と、沸かしたてのお湯で入れたお茶を受け取りながら、兄さんは低く笑った。

 

「だから、人ってのは戦争ができるんだ。」

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