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7:08

ぐーん、と布団の隙間から肌色と鈍色の腕が伸びる。

「ふわぁ~あ…なんかすっげーよく眠れた…この辺りすっげー静かじゃね?昨日は鳥がうるさかったのに…」

夕方ベッドに潜り込んだっきり起きなかった兄さんはそう言って僕の方を見ると、微妙な顔をした。

自分で云ったことに気がついたんだね。

まだ耳は治ってないらしい。

まあ、眠れるのはいいことだしね。

7:30

柔らかめのパンと、具の少ないスープを近くのカフェで買って兄さんに食べさせる。

8:17

1階で小ぶりのタライに熱めのお湯を入れて戻ってくると、昨日兄さんが寝ている間に図書館で借りてきた本の山にかじりついているのをみつけて引き剥がす。

めざといなぁ。隠してたのに。

 

「こーらっ。下着のままなにやってんの。部屋着を借りてきたから今日はこれを着てなよ。はい、体拭いて!」

しゃがみ込んでいた兄さんの両脇に手を入れてからだを床から持ち上げると、タライの方に押しやる。

タオルと部屋着を見せるとふてくされながらもタオルをお湯につける。

その間僕はベッドのシーツを確認する。

一応外出時に来ていた服は脱いで、下着で寝てたから、汚れてはいなさそう。

”シーツ気になる?代える?”

手帳にそう走り書きをして見せると、首を横に振られた。

なんかあんまり喋ってくれないなぁ…やっぱり具合悪いのかなぁと考えていると、兄さんは右手で筒みたいな形を作るとそれをもう片方の手で口元に持って行くジェスチャーをしてきた。

しかも顔がニヤニヤしてる!

「なんだよっ、僕は聞こえるんだから兄さんはちゃんと云えよ!」

「あっはっはっは!」

「性格悪いなぁ!あと薬飲んでるんだからコーヒーはだめ!」

12:48

一緒になって読書に夢中になってしまい、慌ててサンドイッチを買いに走る。

15:27

寝落ちた兄さんを起こさないように、絡まったシーツから本と手帳とペンを掘り出す。

17:00

読書を中断してストレッチをしていた兄さんの傷口が開きかける。

19:04

「もう気持ち悪くないから何でも食べれるぞ」といった兄さんに牛乳を買ってきて軽く追いかけ回される。(枕が水差しに命中して終了)

21:58

薬の数を数えて飲み忘れがないか確認してから文句を云う兄さんをベッドに追いやる。

「あとちょっと!もう読み終わるんだって」

「さっきもそういって10分後に違う本読み出したじゃんか」

「眠くねぇつってんのに!」

ベッドに押し込まれると寝落ちる癖に。

まだあらがってくる彼の腕をとって毛布にしまいながら、怪我してるんだからちょっとは安静にしてればいいのにと思う。

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