鋼錬、あんスタ、ぬら孫のBL二次創作サイトです
落ちつけ。落ちつけ。
「兄さん、今日飲みすぎじゃない?」
「ッ…!」
落ちつけ…ない…。
かちゃかちゃ、
ざーっ
アルフォンスが皿を洗う音がする。
ソファーの上で転がっていた俺はくるりと身体を反転させて肘かけに顎を乗せた。
ちゃんとエプロンをつけたアルの後ろ姿が見える。
「……。」
昼のことがあって以来俺の心臓は調子が悪い。
好き勝手にばくばくと暴れて俺の頭や全身に血をむちゃくちゃに送り出す。
おかげでフツーに飲んでただけなのにいつもよりも早くつぶれてしまった。
…わかったよ!正直に云えばいいんだろ!
アルのことが気になって仕方ねーよ!
好きか?と訊かれれば好きに決まってる。だって家族だ!
だけどそれだけじゃない感情がある気がしてならない。
……少なくとも俺の心臓はそう主張してる。
中央イチの図書館にこもったってこの答えが書いてある本はみつからないんだろーな。
わかんねーことがあるのは嫌いだ。
「…ん、」
台所の水音が途切れたので目線を上げると、アルが腕を伸ばして流しの横に皿を置いているところだった。
眼を伏せてる、
横顔。
コドモの頃の面影を残した、
男っぽい、顔。
どくっ、
どくどくどくどく、
「っ…!」
バッと俺は起き上がった。
身体にかかっていた厚手のショールをひったくると窓から庭へ飛び出した。
あ、あのまま部屋にいると、まずい!
身体、に 悪いっ!
しばらく小走りに走ってから冷たい風に吹かれて、手にしていたショールを身体に巻いた。
吐く息が少し曇る。
けど寒さを気にするよりも何よりも、今は心臓の暴走を治めないと気が気でない。
まずい。非常にまずい。
なんだか良くないものを感じる。
「いやいやいや何いってんだよ俺。落ちつけ落ちつけ。」
熱を持ったままの頬を叩きながら俺はぺたぺたと道を歩きはじめた。
そういやあ裸足のままだ。
「ははっ、アルに気づかれたら怒られるなぁ…」
名前を口にしてから俺は溜息をついた。
「…参ったな…マジかよ…」
トチ狂ってる自覚はあったけど、まさかここまでとは自分でも思わなかったぜ。
まさか弟にトキめく時がくるなんてよ?
徐々に家から遠ざかっていく。
河川敷を歩きながら俺は思考に意識を集中させる。
…そりゃあ、フツーの兄弟よりは絆は深いだろう。
色んなコトをみて、通ってきて、
何があっても一緒にいられた。
いてくれた。
そんだけでも奇跡みたいなのに。
惚れるか?弟に。
「だぁあああ!小っ恥ずかしいィ!!つか!アホか俺は!!」
頭の中で言葉にしてから俺は思わずのたうちまわった。
「ふ…ふふふ…自分が信じられねーぜ…」
一通り考えてのたうちまわってみても結果は同じで、俺は思わず暗く笑った。
「浅ましい…な、俺。」
項垂れると足許が見えた。
いつの間にか歩くのをやめていた。
上を見ると白い光がぽつぽつと小さく灯ってる。
キレイなものを見ると、アルに見せたいなぁと思う。
嫌なものを見ると、アルには見せたくないと思う。
そんでもって飛んで帰ってアルに会いたくなる。
身体を取り返せて、一年たって、また一年たって、
平和で、
気がつけばずっとアルとこうしてたいと思ってた。
両眼を閉じて手で押さえた。
「…やばい…俺、マジ、だ…」
そのまましゃがみこみかけた時、
「兄さんっ!」
「!! なっ、」
道の向こうからアルが駈けてきた。
「何してるんだよ!探した、ん、だから、」
「な!?え、なに、」
突然現実に引き戻されて俺は眼を白黒させた。
ついていけない、
何を、どうすれば
いいんだっけ?
「っ、」
「わ、ちょっと!どこに行くんだよ兄さん!」
「ど、どっか!」
「なんだよそれ!?
あ、危ない!」
「うわっ…!」
足がもつれて、道を踏み外した。
裸足の足が、濡れた芝生の上で滑って、
「ぎゃぁあああ!?」
「兄さん!」
俺は50メートルほど川へ向かって転がっていった。