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執筆者の写真しろ

アルフォンスの「体になれてないシリーズ」とか書きたい(鎧豆絵と小話)

アルフォンスの「体になれてないシリーズ」とか書きたい。文字が書ける工程とか、人に触れるのにどのくらい時間がかかったとか、素材によって一つ一つ力加減を覚えていった様子とか。 昨夜眠れなかったので即興30分チャレンジ。ちょっとだけ加筆しました。

即興二次小説 お題:楽観的な手 制限時間:30分

 

がしゃっ、がしゃん、どたっ、がっしゃーん!

「アルフォンス!」

僕は魂が鎧に定着している、存在。 生き物と呼んでいいのかもうわからない。 兄さんが錬成してくれたときは、無我夢中だったから動けたけど、今、僕はいろいろできなくなっている。

普通に歩いているつもりが、何かに気をとられるとすぐに体の制御が効かなくて今みたいに転んでしまう。 原っぱで練習していた僕を、離れたところで見ていた兄さんが呼ぶ。

鎧の顔があるところを声がした方に向けると、自分の頭と兄さんの慌てた顔が見えた。 あぁ、転んだ拍子に頭がとれちゃったんだな。 地面に両手をついて、体の向きを整えて右足をついて起き上がる。 間違えないようにゆっくりと。 そうしている間に、兄さんが片足で立ち上がって松葉杖でこっちにこようとしている。

「あっ、大丈夫だよ、兄さん」 「アル、アル、大丈夫かっ」 「ここ、まだ地面が柔らかいから」

急いで頭を拾ってくっつけている間に、兄さんがもう目の前までやってくる。 あと一歩、というところで兄さんの杖がブスッと地面に深めに刺さって、小さな体がバランスを崩す。

「わっ!」 「危ない!」

慌てて自分の両腕を曲げて突き出すと、兄さんは杖を放り出してそれに捕まる。 なんとか転ぶのは防げたみたいだ。

息をついて、顔を見合わせてから、あまりの必死さにお互いちょっと吹き出してしまった。

「ははっ…お互い、歩くの下手だなぁ?」 「ホントだね…いっぱい練習しなきゃなぁ…」

いろんなことをイチからやり直さなければならない僕は、頭の中のリストをなぞった。 歩く、走る、座る、立つ、ものを適切な力加減で持つ、字を書く、

それから僕は視覚が唯一の頼りだから、常に対象を視界に入れる練習。

師匠のところで修行してたみたいに、体が動かせるようになるのは、どのくらいかかるだろう。

どれもまだろくにできない僕は、しょっちゅうウィンリィの手伝いをするつもりが、有り余る力でお皿を割り続けている。 何を触るにしても、適切な加減がわからない僕は、何かをさわるのが少し怖い。 今も、兄さんが落とした松葉杖に気づいてはいるけど、拾ったら折ってしまうかもしれないので、何もしない。

兄さんは僕の腕に捕まったまま、うーん、と声を漏らしている。

「よーし、そんじゃあ、俺の機械鎧ができるまで、練習に付き合ってやるよ」 「えぇ?どうやってさ」 「アル、ちょっとまっすぐ立ってみろ」 「う、うん」

兄さんが捕まったままなので、僕はゆっくり体を起こして、背筋と膝を伸ばす。 頭は兄さんの方を向けたまま。 身長差がずいぶんできてしまったので、気をつけないと胸の飾りで兄さんが視界から見えなくなりそうだった。

「これでいいの?」 「足、もうちょい閉じ気味で、あ、そう、そんな感じ」 「兄さん、あんまり寄ると見えないよ」 「いいからいいから。腕はこの辺」 「よくないよ、危ないよ、わっ、ほら見えない」 「大丈夫だって、俺は見えてるから」

ポンポンと元気よく返事を返しながら、兄さんは僕の腕や足をああでもないこうでもないと整えると、ひょいっと視界から消えてしまった。 じっとしていると、かちゃ、と下の方から音が聞こえる。

「兄さん?」 「よし!準備オッケー!歩いてみろ、アルフォンス」 「えぇえ?」

何がオッケーなのかひとつもわからない。大体兄さんがどこにいるのかもわからないで動くのが怖くて、僕が固まっていると、兄さんの小さな手がひらりと見えた。

ほら、と左手が僕の左手の中に収まる。

「わっ、危ないよ!間違えて力いれちゃったら指が折れるよ、手が砕けるよ!」 「へーきへーき。握りこまないで隙間空けてろよ」 「で、でも、」 「いいから右足を前にだせ!」 「わ、は、はいっ」

強めの声でいわれて、思わず足を前にだすと、自分の大きな足に、兄さんの足が乗っているのが見えた。

「ワーーー!何してんのーーー!?」 「おっ、いいぞ、アルフォンス。その調子だ!」 「違うでしょ~~~!?」 「次は左足!」

危ないから降りて!とか、落ちても知らないよ!とかいうのに、兄さんは全然聞いてくれない。 兄さんは僕の手足の動かし方やバランスを細かく指示しながら、自分のバランスをとっている。 それにしても危なすぎるので、思わず僕は空いている右手で彼の体を支えた。

本当は自分から触るのは怖いのに、

あぁ、もう!

どうか、あばらを折りませんように!

僕の手に気づくと、兄さんは、にかっと歯を見せて笑った。

「さんきゅー、アル」 「兄さん、むちゃくちゃだよ…もう…」 「すぐ慣れるって」 「そうじゃなくて!」 「ほら、もう一周してみようぜ。アルフォンス号発進!」 「なんだよそれぇ!」

がしゃん、がしゃん、がしゃん、と僕はゆっくりと草を踏んで歩き続ける。 足を上げすぎたり、重心がずれたりすると兄さんが言葉で修正をしてくれる。 その間、ずっと、僕の手の中には兄さんの手が収まっていた。




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