ちょっとだけ編集済。
即興二次小説 http://sokkyo-niji.com/ で30分チャレンジ。お題『清いあいつ』
おはようとか、おやすみとか、いってらっしゃいとか。
ちょっとした挨拶の時に頬と頬を合わせたり、頬と唇を合わせたり。
小さいころは母親によくしてもらっていたことを、今は唯一の肉親と交わす。
5歳も離れてしまったけど、弟が生身の体を持っているという事実が愛しくて仕方がない。
いろいろ落ち着いてからは、ハグだってしょっちゅうしていた。
最初のころ、あいつは少し照れ臭そうにしていたけど、今じゃあ普通にしてくる。
ただし、外でするとめちゃくちゃ怒る。
「アル、もう遅いから寝ろよ」
寝巻に袖を通しながらアルフォンスの後ろ頭に声をかけると、「うーん」と生返事が返ってきた。
本を読むのに夢中らしい。
ソファーの前に回り込んで手元をのぞき込むと、気分転換なのか、小説を読んでいるようだった。
ブライトゴールドの髪を撫でつつ、丸みを残した頬に自分の頬を寄せた。
「アール?俺もう寝るからな?」
「うん…」
「あんま夜更かししてると背ぇ伸びないからな」
「うん……ん?」
「子供は寝ないと育たねーっていうし」
「ちょっと!子供扱いしないで!」
やっとこっちを向いた眼が半眼になって怒ってくる。
わしゃわしゃと短い髪をかき混ぜると「兄さん!」と怒号が飛んできた。
ある程度構ったところで満足した俺は、「ん」と両腕を広げた。
「……なに」
「寝るから」
「だから」
「おやすみのキス」
「…さっきしてたじゃんか」
「アルからもしてくれ」
「しません」
不機嫌になってしまった弟は本をローテーブルに置くとそっぽ向いてしまった。
「なんだよ、アル~最近冷たくねぇか、オマエ?」
「兄さんがべたべたしすぎなんだろっ。僕は普通だよ」
「いいじゃねーかちょっとくらい過剰になったって」
なんせ何か月も離れ離れだったんだ。しかも別々の世界に!
再会できた上に一緒に住むことができている現状は奇跡だ。
ちょっとくらい愛が過剰になっても許してほしい。
「愛ね…」
俺が熱く主張していると、可愛い弟はふぅ、とため息をついて俺のほうに向きなおってきた。
「いいよ。わかった」
「お?」
「その代わり、僕もちょっとくらい過剰になっても、許してくれる?」
アルフォンスが?スキンシップを過剰に?
そんなのいくらでもいいぞ、と返答するとぐいっと小さな手で胸を押された。
「わぁい。ありがとう、兄さん。」
弟が喜んだ声を出している。可愛い。
しかし、思いのほか強く押されて、俺の背中はソファーに沈み込む。
なんでだ、と考える間もなく、腰あたりに体重を乗せられる。
5歳離れた弟、
無事に肉体を取り戻せた弟、
清く新しく人生をやり直していた弟、
俺との記憶を取り戻してしまった弟。
「じゃあ…遠慮しないね?」
まっさらな魂のはずのアルフォンスはしかし、どこか陰のある笑顔で俺にまたがってきた。
(清い?あいつ)
散々手籠めにされて酷い目に遭った後めちゃくちゃ優しくされる兄さん。
シャンバラアルはちょこっとだけ怖いイメージがある。原作もだいぶ怖いけど。
「はい、髪の毛もまっすぐになったよ。ごめんね、絡めちゃって」 「散々日頃の鬱憤を晴らされた気がするんだけど…おまえどんだけ思い詰めてたわけ…なんだこれ俺が悪いのか?」 「時間遅くなっちゃったね」 「聞いてねぇなおまえ」 「これからは好きなだけキスしてあげるからね」 「それ俺がほしいやつじゃなくね?」
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